2021年6月22日

 

回顧録2:榎本美月

今は、彩夏には思い出してほしくない。

去年の夏の、とてもいやな記憶。

柿沢さんは私たちの同級生だった。
彩夏と同じ美術部で、絵が上手くて、美人で、頭が良かった。

その上、彼女には偉大な兄がいた。同じ高校に通う柿沢翔太は、生徒会の中心メンバーを務める一方、テニス部では全国大会に毎年出場していた。

完璧な兄を持つ、美しい妹。

「スクールカースト」……あまり使いたくない言葉だけど、彼女は確実に上位の存在だった。
そんな彼女がなぜ……

なぜ、彩夏の机に悪口の張り紙をしたのか……クラスの誰もが不思議がった。

しかし事実として、彩夏の机に貼られた紙は、柿沢さんのノートから切り取られたものだった。

 

 

張り紙事件のすぐあと、彩夏は一人で担任に秘密を打ち明けに行ったらしい。

以前から、柿沢さんにいじめられていたこと。
張り紙の何倍も、SNSで悪口を書かれたこと。

担任がまだ経験の浅い新任だったからだろうか。
それとも、たとえベテラン教師でも、高校生の情報網を遮断することはできなかったのかもしれない。
彩夏の秘密の告発は、いつのまにか学年中に広まった。

いじめの犯人がカースト上位の柿沢さんだった、という話題がみんなの好奇心を刺激した。
やっかみもあったのだろう。いやがらせや陰口が彼女の目の前で行われた。

やがて、正義感に酔った男子が強引にノートを奪い取り、紙が切り抜かれた跡をクラスメイト達の前で晒した。

その日以降、柿沢さんは学校に来なくなった。
彼女が自宅で首を吊って亡くなったのは、一か月後のことだった。

それから、彩夏はずっと苦しんでいた。

「自分が黙っていれば、彼女は死なずにすんだかもしれない」

 

 

2021年6月25日

 

回顧録3:榎本美月

選択のときは、刻一刻と迫っていた。

 

 

6月26日

 

A.たしかに、おかしいね

B.一回落ち着こう?